破壊的イノベーション、それは毎日ニュースを騒がせるバズワード。
でも、それがニュースを読むだけでなく、あなたの新しい責任・任務として命ぜられたらどうしますか?
何を、どのように考えたら良いのか?
破壊的イノベーションとは何なのか?
現存するあらゆるビジネスモデルを破壊し、全く新しいリーダーに置き換わる現象。
既存の企業へのリスクであるだけでなく、物流、流通、決済、製造、サービス、全てが逃げ場を失いつつあります。
その中で、新しい道を切り開く仕事が貴方に降りてきたら、どうしますか?
そんな日を想定して。
いや、あなたには既にもうそうなってるかも知れませんね。
いったいぜんたいどうしたらいいのか。
その思考法を考えてみましょう。
Contents
破壊的イノベーションと破壊的ビジネスは同じか?
世間が騒いでいるのは、単にテクノロジーのイノベーションではありません。
それはビジネスの領域で破壊的な存在になるためのイノベーションであり、イノベーションを破壊的な形で普及させるためのビジネスモデルであったりします。
つまり、破壊的イノベーションと破壊的ビジネスは、新しい価値を創造し普及させるための両輪のようなもので、同じではなく、補完し合う関係性を持っています。
新しいテクノロジーによって可能になる製品、サービス、ビジネスモデル、などを相対的に含む領域です。
英語で、「Enabling Technology(可能化する技術)」と呼ばれますが、何か新しいことを可能にする技術の存在があります。
ただ、その技術単体ではそのままビジネスとして成立せず、あくまでも「可能にする」役割であったりします。
例を挙げると、iPhoneを可能にした「マルチタッチ」という技術があります。
あの、2本またはそれ以上の指のタッチや動きでタッチスクリーン上の操作ができるインターフェイス技術です。
今となっては、当たり前すぎるくらいの技術ですね。
その技術は、アップルには当時 iPadの元となるタブレットコンピュータ用の技術として紹介されました。
ただ、それを見たスティーブ・ジョブスが「待てよ、これで電話ができるじゃないか!」と言ったわけです。
それから、iPhoneの開発が優先され、iPadはしばしお蔵入り。
2007年、iPhoneの登場となるわけです。
ここで言う、iPhoneという製品自体が破壊的イノベーションだったと言えます。
そして、iPhoneを中心として音楽、ゲーム、アプリ、そしてそれらの開発者達にアップストアという「場」を提供し、ユーザーに分かりやすく提供する、それが破壊的ビジネスモデル(エコシステム)だったのです。
しかし思い出してみると、iPhoneに当時できたことは、既に多くの「スマートフォン」で実現していました。
インターネットに接続すること、写真を撮って観覧すること、そしてもちろん電話を掛けること。
でも、それまでのスマートフォンは、どちらかというとテクノロジーに慣れたビジネスマンの道具でした。
それを、iPhoneは一気に大衆のものに大変容させたわけです。
それは何故か?
それは、「何 (What) ができるか」ではなく、それを「どのように (How) できるか」で達成したからです。
マルチタッチによって、ウェブブラウザはボタンではなく指でスクロールでき、写真は2本指でいとも簡単にズームイン・アウトができ、電話帳も指で直感的にスクロースできるようになったので、「これ、私もやりたい!」「僕も欲しい!」となったわけです。
マルチタッチ技術は、まさにそれを「可能にした」技術であり、それそのままがビジネスになったのではありません。
ここで覚えておきたいのが、スティーブ・ジョブスが「待てよ、これで電話 ができるじゃないか!」と言った、あの感覚です。
それが、破壊的イノベーションを起こすための思考・発想なのです。
ジョブスは後日、「イノベーションとは、ものすごい単一の技術やアイデアにあるのではなく、『組合わせ』にある。」と言っています。
破壊的要素には必ずテクノロジーが関わっている。
さらに iPhoneを例として続けましょう。
アップルがすごかったのは、iPhoneを動かすソフトウエアのベースとして、既にマックで使用していたOS(オペレーティング・システム)のOS XをベースにiPhone用に修正して用いたことです。
つまり、それまでは「高機能電話機」を動かすためのファームウエアが主流だったところを、「コンピュータ」を動かすためのオペレーティング・システム (OS) を用いたことです。
これの何がすごかったかというと、後日導入される「アプリ」群が容易にサードパーティにも開発することが可能になり、それを動かすベースが強化された、ということです。
今日振り返って、アプリの無いiPhoneって想像できますか?
この、アプリと、そのアプリから得られる収入の形、それを見出したアップルがすごいですよね。
iPhoneのデビューした当時、サードパーティアプリもアップストアもありませんでした。
ただ、もちろん、iPhoneを登場させる前からアプリ(それもサードパーティのアプリ)の世界を展開することは、アップルは考え準備していたのです。
つまり、ここでも、複数の技術と、革新的なビジネスモデルの「組み合わせ」が勝敗を決定づけました。
これが、アップルの「エコシステム」の基盤になったのです。
それまでも、iTunes Storeという音楽を有料でダウンロードするというビジネスモデルは形成されていました。
ただ、それはiPhoneの前にiPodでも達成できていたことです。
それを、もっとコンピュータとして、ゲームやアプリに展開していったのです。
やはり、テクノロジー(ソフトウエア)は確実に中心的でありながら、それを取り囲むようにビジネスモデルを形成する、そのクリエイティビティが重要になってくるのです。
「破壊後」の世界を可視化できますか?
さて、覚えていますか? iPhoneがまだ無かった頃の世界、あなたの生活パターン。
ちょっと、その頃に遡って想像してみてください。
あの頃、iPhoneによって初めて可能となる世界が想像できたでしょうか?
今や、携帯電話であるはずのiPhone(またはAndroidなどのスマートフォン)で実際に電話を掛ける時間と、アプリを使う時間の比率はどうでしょうか?
私たち全員の生活パターンや前提、行動、価値観、優先順位、スピード感、空間、その他全てが変わってしまった現在、それ以前の世界に立ち戻ることすら難しいように感じます。
しかし、そこに立ち戻れたとして、そこから現在を想像することがいかに難しいか。
でも、それをすることが今、とても重要なのです。
今、この時点から、「車(移動空間)が完全自走できるようになった時」、「冷蔵庫とスマホが自動的にコミュニケーションできるようになった時」、「全ての自動販売機があなたの好みを知っているようになった時」など、どのような生活感覚がするのか?
その時、何がしたくなるのか?
何が不要になるのか?
何が嬉しいのか?
何が面倒なのか?
それらの体験・体感を想像の中でどこまで「感じる」ことができますか?
勝敗は、そこで決まります。
破壊的イノベーションを起こせる思考法とは?
「イノベーションとは、組み合わせにある」このスティーブ・ジョブスの言葉を借りるまでもなく、技術と行動、技術とサービスモデル、技術とビジネスモデルを組み合わせ、全く新しい流れを創り出します。
自分がフォーカスする市場のユーザーの立場に立った、テクノロジーをきっかけとした自由な組み合わせの思考法。
それが「破壊的」なのです。
発想の点と点を結ぶ、そこに線が生まれる。
点が多くなると、その間を結ぶ線が重なり合う。
それが、面になる。
その面が形成される時に、複雑になるのではなく、格段にシンプル化され時間短縮になる。
便利になる。
直感的になる。
楽しくなる。
そこ、です。
現状世界では、「当たり前」と思われている、しかし、消費者が不満に感じている部分を根底から取り払い、例えば思い切りシンプルに、または低価格に、する。
そうなった後の世界や流れを想像し、その中に自分が生活し利用するシーンを疑似体験してみる。
「破壊後」の世界が見えていれば(ビジュアライズできていれば)、それは自然に「こう出来たらいいのに」という仮想欲求として湧き上がってきて、自然と「世界観」として「感じられる」ようになります。
既存の理屈やセオリーを気にせず、「当たり前」を自由に大胆に断捨離する思考です。
そのようにトレーニングすることが、一つの「破壊的イノベーション」を司る力を付けていくことになります。
難しいと感じますか?楽しそうと感じますか?
「夢見ることができれば、それは実現する」
つまり、「夢見る」(ビジュアライズする)ことの中で、あれこれ想像してみる、試してみる、感じてみる、そういうことなのです。
そこで、単なる理論上の想像の世界だけでなく、その中で「感覚」として捉えられる習慣をつけていくことです。
想像の幅や点と線の多さは、思うがままに自由に広げてみて良いのです。
広げられれば広げられるほど、その可能性も広がっていきます。
後は、必要・適正に応じて整理・断捨離するのは簡単なことです。
「狭める」のはいつでも簡単に、論理的にできるので、まずは極限まで広げてみることです。
その世界が、想像の中でハッキリと映像のようにビジュアライズできて、さらに、その便利さ、うまくいかない時の不快感、楽しさ、何かが足りない時の欲求不満感、などが感覚として捉えられるようになると、実現性はどんどん高まっていきます。
決して、経営学的のみに、技術的のみに考えてはいけません。
デザイナーの感覚、音楽家の感覚、などを(例えあなたがアーチストではなかったとしても)想像してみてください。
もっとも重要なのは「感じること」なのですから。
ハッキリ、具体的に想像できる(夢見ることができる)ならば、それは非常に現実化に近くでしょう。
その為には、現状のものに対する不満感、不足感、理不尽感覚、など、現状に満足しない感性を研ぎ澄ますことでもあります。
さてさて、テクノロジー(技術)という、わりと硬めの部分から、イマジネーションという、柔らかい部分に至るまで、広くお話をしてきました。
あなたの想像世界のタイムマシーンは、発進準備はできましたか?
まとめ
一口に言っても、破壊的イノベーションとは複雑な要素を含んでいます。
* それを可能にする新テクノロジーが存在する。
* それ単体ではなく、複数技術、複数要素を「組み合わせる」ことが需要。
* その世界を極限まで広げて考え想像してみる。
* 点と線が重なって面になり、そこに「世界感」が生まれる。
* その時に重要なのは「感じる」こと。
* その想像世界の中での便利感、不満感、嬉しい感、不足感、を重要視。
* 複合要素をモデルとして形成させていく。
以上、破壊的イノベーション思考の入門編としては、まずビッグピクチャー(マクロ的視野)で捉え、その中で細かい心の動き(ミクロの感性)を捉えるところから入ってきました。
いかがでしたか?